ヒツジ遊牧の起源:ヨルダン南部ジャフル盆地の調査から
藤井純夫(金沢大学文学部)



遊牧起源の問題は、先史遊牧民の足跡自体を特定しにくいという事情もあって、主として人類学・民族学の領域で理論的に論じられてきた。しかし、先史遊牧民が考古学的足跡を残さないと言うのは、大きな誤解である。集落を形成しない彼らも、墓だけは造る。しかも、視認性の高い「石積み塚(ケルン墓)」を造る。よって、墓制面から彼らの動向を追跡することは可能であろう。そうした展望の下、ヨルダン南部のジャフル盆地で調査を続けてきた。その結果、先土器新石器文化B後期(紀元前6500-6000年頃)における移牧拠点の存在とそこから派生した遊牧の痕跡を明らかにすることができた。その成果の一端を紹介する。遊牧起源の問題を、具体的な遺跡名を伴う考古学的論議の中に誘導したい。





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