はじめに
石田 英実(滋賀県立大学人間看護学部),
金澤 英作(日本大学松戸歯学部)



 動物にとって「食」は、生命を維持し子孫を残すために必要不可欠な、最も基本的な行動である。そのため、動物は「食」に適応するように進化してきた。ヒトもその例外ではなく、「食」の変遷とそれに対する適応の歴史が現在の私たちを形作っている。ところが、近年の科学技術の発達により、私たちの食生活は急激に変化してきた。その結果、生活習慣病、肥満、不正咬合、歯列不正、顎の疾患など、現代人は「食」に関わる多くの問題を抱えるに至っている。

 「食べる」という行動は、「食べ物」とそれを「食べる者」とがあって成立する。「食」という観点からヒトの進化を考えるときには、その両方を常に考慮する必要がある。本シンポジウムでは、「咬むもの・咬まれるもの」、すなわちヒトの咀嚼器と食物の相互作用の歴史に関する最新の研究成果を紹介し、「食」に焦点を当てて人類の進化と未来を考える。そもそも初期人類が適応してきた「食」とは何だったのだろうか?一方、飽食・グルメの現代を生きる我々の「食」は、我々の未来にどのような影響をもたらすのか?本シンポジウムではこうした人類進化史的アプローチを通して、「食」に関わる現代的問題の根本原因と対策について検討する。




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