考古学における性とジェンダー
松本 直子(岡山大学)



 長期的な変化を扱うことができる考古学は、人類史において性に関わる行為や認識がどのように発達してきたかを検討できる重要な立場にある。しかし、物質的痕跡の分析と解釈は常にある程度の曖昧さが伴う。今回の発表では、人工物として表現された身体に焦点を当て、先史時代の生殖・ジェンダー・セクシュアリティにいかに迫りうるかについて考えたい。現生人類の社会においては、物事の意味は多様であり、文化によって相対的な部分が大きいとされるが、顔や表情の認知など、かなり普遍的な認知システムの存在も認められている。私たちは、残された物質文化を解釈するときに、何を足がかりにして、どこまで読みとることができるのだろうか。旧石器時代の「ヴィーナス」や縄文土偶は女性の「産む力」を表現したものなのか。それとも「セクシー」なものなのか。物質文化がもつ意味の多義性の問題、研究者の視点がもつバイアスの問題などにも触れつつ、性に関する考古学の可能性を探りたい。





公開シンポジウムのページに戻る