ナメクジウオの運動解析とシミュレーション解析
熊本 水頼(京都大学・名誉教授),藤井 健一(ふくしま海洋科学館)



 ヒトや動物の歩行のCPGは脊髄レベルにある。それを可能にするのは四肢リンク機構に備わる拮抗2関節筋と両端の関節の拮抗1関節筋群を単一の入力信号で協調活動を招来する神経―筋制御回路システムの存在である。このシステムの基本構成単位を成す1対の拮抗筋とその神経支配回路、すなわち拮抗筋制御システムは遠く古生代に出現したナメクジウオにその淵源を見ることが出来た。ナメクジウオの詳細な遊泳運動解析から、7対の機能的拮抗筋配列を想定し、それを時間差制御することで前進後進自在なS 字状遊泳運動をPC上でシミュレーション再現することに成功した。ナメクジウオの筋節は高等動物の骨格筋と変わらぬ位完成度の高い横紋筋構造を示すこと、かつ神経索中の解剖学的所見などは、ヒトを対象に提案した拮抗筋制御の神経回路と等価な神経支配回路の存在を窺わせるに十分である。

 




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