霊長類の後肢筋配列理解へのロボット工学的解析によるアプローチ
中務真人(京都大学),藤川智彦(富山商船高等専門学校),大島 徹(富山県立大学)



 この研究では,霊長類三種の後肢の運動特性を,二関節リンクモデルを用いて解析した.このモデルは各関節における二対の拮抗一関節筋と両関節に関与する一対の拮抗二関節筋の三対六筋の協調制御機能を考慮に入れた座標系を用いている.これに基づき,生理学的筋断面積を筋収縮力として,足根関節と中足骨頭に発生する出力特性を計算した。ヒト,チンパンジー,ニホンザルを対象として得られた結果は,これら三種霊長類の運動適応の上から合理的に説明できるものであった.ストライド歩行に適応しているヒトにおいては,抗重力型の出力分布が見られた.一方,ヒト同様に踵をつける歩行を行うものの,ヒールストライクは行わないチンパンジーでは,こうした特徴は弱かった.ニホンザルの場合,中足骨頭よりも足根関節における出力が大きかった.これは,踵をつけない歩行,俊敏な歩行・走行運動と関係していると考えられた.解析の有効性が示されたことは,仮想モデルから各筋の進化的意味を推測する可能性を示した.

 




公開シンポジウムのページに戻る