- 開催趣旨
- 國松 豊(京都大学・霊長類研究所)
- 人類の起源を解明するため、化石研究は欠く事のできない重要な柱のひ
とつである。人類化石については、これまで、世界各地で時代の異なる
さまざまな産地から、いろいろな標本が報告されてきた。特にアフリカ
では、東部と南部を中心に初期人類の化石が多数見つかっており、更に
ここ数年間で、ケニヤやエチオピア、チャドから次々と古い人類化石が
発見され、その記録は中新世末にまで遡る事になった。一方、類人猿の
化石に関しては、漸新世後期から中新世半ばの初期類人猿がアフリカ
(特に東部)から、かなりの数、報告されているものの、ヒトとアフリ
カ類人猿の分岐が起きたと考えられる中新世半ば以降の化石はアフリカ
からはほとんど見つかっておらず、肝心の部分が空白となっている格好
である。だが、最近、日本隊の調査によって、ケニヤのナカリ地域の後
期中新世初頭の地層から新たに大型類人猿を含む霊長類化石が発見され
た。調査はまだ継続中であるが、この空白期のアフリカにおけるヒト上
科の進化に光を当てる事が期待される。今回の進化人類学分科会シンポ
ジウムでは、人類学、古生物学、地質学の立場から、ユーラシアとの広
域的な関係も視野に入れつつ、ナカリにおける日本隊の調査を紹介する。
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