研究内容

ケニア、ナカリにおける化石霊長類発掘調査

ヒトと現生アフリカ類人猿系統の分岐は、1200万〜800万年前に起こったと推定されていますが、この時代の化石産地は全アフリカで数ヶ所、うち化石類人猿が知られているのは3ヵ所しかありません。

2005年以来、私たちが調査しているケニア、ナカリ層は、その中で飛び抜けて豊富な霊長類化石を産出することから、世界的な注目を集めています。この地域の約1000万年前の露頭から新種大型類人猿ナカリピテクスを含む数種類の霊長類を発見しました。同時代ヨーロッパの化石種との比較から、ナカリピテクスを含む系統はアフリカを超え西ユーラシアまで広がる分布をしていたのではないかと予想しています。

植食性哺乳類の歯エナメルの安定同位体分析では、ナカリ層の時代直後、東アフリカでC3環境からC4環境への移行が始まったことが明らかになりました。ナカリはほぼ純粋なC3環境と推定され、それは樹上性小型コロブス類の存在量、植食性大型哺乳類の歯牙咬耗様式などからも支持されます。30万年後の、やはり類人猿が出土しているケニアのナムングレ層はC4環境のシグナルを示し、この時代の類人猿が高い多様性をもっていたことが示唆されました。 ナカリピテクスの四肢骨は、直立二足性にいたる人類の進化シナリオを明らかにする重要な鍵となるため、その発見をめざして、可能性の高い露頭の重点的発掘を進めています。

マクロ形態の発生

化石資料を念頭に置いた研究では、形態が最も重要な情報のひとつとなります。現在目にすることのできるヒトとヒトに近縁な類人猿には、大きな形態変異があります。 このような変異は、どのようにして生じているのでしょうか?それを解く鍵が、個体発生にあります。 生物はそれぞれ種に特異的な形をもっていて、オトナを完成形とすれば、完成形に至る 「道のり」もそれぞれの種で異なっています。 この「道のり」が個体発生です。生物が完成形というゴール地点を変える進化をするとき、発生パターンも必ず変わります。 そのため、現生種の個体発生を比較が、進化過程を解明する重要な鍵のひとつとなります。 本研究室では、ヒトとヒト以外の霊長類を対象として、マクロ形態の発生に関する研究を行っています。
 マクロ形態とその発生を比較するうえで重要なのは、形の定量化です。生物の形は、三角や四角といった、単純な形をしていません。 例えば、あなたと他人の顔が違っているとき、どこがどのように異なっているでしょうか? このように、形態的特徴は微細でつかみ所がない場合があるため、既存の手法では定量的にその形態を比較することができないこともあります。 この問題を解決するため、形態地図法(Morphometric Mapping)という新規手法を開発し、これまで不可能だった微小な形態変異の解析を可能としました。このような独自手法を用いて、人類の進化を形態という側面から明らかにしようとしています。

古人骨の研究

自然人類学研究室は「清野コレクション」と呼ばれる日本屈指の縄文人骨資料を所蔵しています。この資料は日本列島におけるヒト集団の変遷とその生活様式の研究に大きな役割を果たし、多くの研究者が利用に訪れています。骨からわかる表現型の特徴や生活痕の分析、骨や歯の安定同位体分析などによって、行動上の特徴や食性の推定、集団ごとに異なる身体形質の進化などの解明をめざした研究が行われています。

霊長類の運動分析

ヒトを含む現生霊長類の動作の分析を行い,ロコモーションのメカニズム,特に二足歩行の起源の理解をめざして研究を進めています。二足歩行獲得のモデルとして,二足で歩くニホンザルの歩行分析を行っています。二足歩行に熟練すると、その歩容はヒト的な特徴を示すようになります。また下肢の筋骨格形態もその力学的要求に適応して変化してきます。二足で歩いた時と四足で歩いた時のエネルギー消費量の比較なども行っています。ヒト的な歩容が,実際に,運動効率を上昇させていることもわかりました。

より詳しい研究紹介

一部の研究を抜粋して、
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でより詳しい内容を紹介しています。

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